ファクタリング

ファクタリングと手形割引の違いを徹底解説

更新日:

  • 本記事の監修弁護士
弁護士 田島 聡泰 シン・イストワール法律事務所

監修者

弁護士 田島 聡泰

シン・イストワール法律事務所代表弁護士。東京弁護士会所属。
注力分野:債務整理(自己破産・過払い金・闇金・ファクタリング)・養育費回収など

「ファクタリングと手形割引はどう違う?」
「そもそも手形割引ってどういう意味なんだろう?」

そんな疑問をもったあなたのために、この記事ではファクタリングと手形割引それぞれの意味、違いや共通点についてご紹介します。

専門家の力を借りながら、落ち着いて問題を解決していきましょう。

本記事のテーマ

  • ファクタリングとは
  • 手形割引とは
  • ファクタリングと手形割引の違い
  • ファクタリングと手形割引の共通点
  • ファクタリング・手形割引に向いている企業の特徴
  • まとめ:ファクタリングと手形割引の違いを徹底解説
ファクタリング被害を弁護士に相談するメリットや注意点をご紹介

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ファクタリングとは

近年、主に中小企業や個人事業主の間で、ファクタリングが急速に普及しています。

ファクタリングとは、会社が所有している売掛金を売掛金の買取業者(以下、ファクタリング会社)や銀行に売却する方法です。

会社の資金調達は銀行融資が基本ですが、銀行融資は資金調達のハードルが高く、融資実行までに時間がかかることが問題です。

それに対してファクタリングは、手元の売掛金を売却することで資金を調達できます。

中小ファクタリング会社を利用した場合には即日で資金調達できることも多く、他の資金調達方法に比べて利便性が高いです。

また、支払期日前に売掛金を回収することで資金繰り負担を軽減でき、回収不能リスクの回避にも役立つ方法として注目されています。

最近では、ファクタリングの手続きを全てオンラインで完結するオンラインファクタリングも徐々に普及しつつあります。

手形割引とは

ファクタリングに類似した資金調達方法に、手形割引があります。

手形割引は、手形割引専門業者や銀行に手形を買い取ってもらうことで、支払期日を待たずに売上を回収する方法です。

日本では、明治時代から手形取引が盛んに行われてきました。

近年、手形取引は大幅に減少していますが、まだまだ手形を利用する会社は多いです。

一口に手形といっても、手形にはいくつかの種類があります。

手形割引に利用できるのは、約束手形か為替手形のいずれかです。

それでは順番にご紹介します。

約束手形

約束手形は、手形の形態のうち最も一般的なものです。

約束手形には

  • 手形の振出人(支払人・債務者)
  • 手形の受取人(債権者)
  • 支払金額
  • 支払期日
  • 支払いを取り扱う銀行

など、手形取引に関する全ての情報が記載されています。

よく「支払手形」「受取手形」といいますが、これはどちらも同じ手形に対して、立場によって呼び分けるものです。

手形を振り出す債務者の立場から見た場合に「支払手形」手形を受け取る債権者の立場から見た場合に「受取手形」と表現します。

手形割引は手形の受取人が行うものですから、手形割引に利用されるのも受取手形となります。

為替手形

為替手形は、基本的に約束手形と変わりません。

ただし、約束手形の当事者は手形の振出人と受取人の2者であるのに対し、為替手形の当事者は手形の振出人・受取人・支払人の3者です。

為替手形の支払人は「引受人」とも表現されます。

つまり為替手形は、手形の振出人と支払人が異なる場合に利用する手形です。

とはいえ、為替手形も債権者(受取人)は一人ですから、債権者の裁量で手形割引に活用できます。

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ファクタリングと手形割引の違い

ファクタリングも手形割引も、売掛債権を活用する方法です。

同じようにみえるかもしれませんが、実際には様々な点で異なります。

ファクタリングと手形割引の主な違いをみていきましょう。

結論からまとめると以下の通りになります。

ファクタリング手形割引
取り扱う債権売掛金(強制力が弱い)手形(強制力が強い)
取引のスピード即日〜数日数日
費用1~30%1.5~15%
債務不履行の際の取り扱い償還請求権がないので買い戻しを請求されない償還請求権があるので買い戻しを請求される
詐欺被害のリスク高い低い
審査対象売掛先依頼人(振出人)

それでは順番に詳しく見ていきましょう。

取り扱う債権が違う

ファクタリング手形割引
取り扱う債権売掛金(強制力が弱い)手形(強制力が強い)

ファクタリングと手形割引の最大の違いは、利用する債権が違うことにあります。

ファクタリングに利用するのは売掛金であり、手形割引に利用するのは手形です。

どちらも、貸借対照表の資産の部に流動資産として計上されるものですが、売掛金と手形では強制力が大きく異なります。

手形は銀行が関与したうえで振出・受取を行うものです。

支払いに遅れた手形は「不渡り」となり、半年間で2度の不渡しを起こした会社は、銀行から取引停止処分を受け、事実上の倒産に至ります。

これが、手形取引の強制力となるのです。

一方、売掛金は自社と売掛先の私人間契約(私人間での合意による自由な契約)によって生じるものであり、強制力がありません。

売掛金の支払いに遅れても、不渡りや銀行停止処分などのペナルティがないだけに、強制力に乏しいのです。

取引のスピードが違う

ファクタリング手形割引
取引のスピード即日〜数日数日

取引のスピードも大きな違いといえます。

どちらもスピーディに利用できることで知られますが、より早いのはファクタリングです。

ファクタリングも手形割引も、利用の際には審査を受ける必要があります。

ファクタリングの方式には、以下の2種類があります。

  • 2社間ファクタリング
    自社とファクタリング会社の2社間で取引するもの
  • 3社間ファクタリング
    自社とファクタリング会社、そして売掛先の3社間で取引するもの

2社間ファクタリングの場合、即日で利用できるケースも多いです。

3社間ファクタリングは売掛先が関与するため、数日を要します。

手形割引の場合、審査結果自体は当日中に通知されることも多いですが、対面や郵送でのやり取りが必要となるため、最短でも数日を要すると考えてください。

費用(手数料・印紙税)が違う

ファクタリング手形割引
費用1~30%1.5~15%

ファクタリングと手形割引は費用も違います。

ファクタリングの手数料は、売掛金の額面金額に手数料率を掛け合わせた金額を請求されるのが一般的です。

実際の手数料率は、ファクタリング会社やファクタリング方式によって異なりますが、相場は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング
    10~30%
  • 3社間ファクタリング
    1~10%

一方で手形割引は、手形の額面金額に割引率(年率)をかけて算出します。

割引率は、手形割引の依頼先によって以下のように異なります。

  • 都市銀行
    1.5~3.0%
  • 地方銀行
    2.0~3.5%
  • 信用金庫
    3.0~5.0%
  • 手形割引業者
    2.5~15.0%

このほか、割引額が10万円以上の場合には印紙代がかかりますが、基本的には手形割引のほうが安いです。

ファクタリングの手数料の相場を詳しく解説【悪質ファクタリングの可能性】

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債務不履行の際の取り扱いが違う

ファクタリング手形割引
債務不履行の際の取り扱い償還請求権がないので買い戻しを請求されない償還請求権があるので買い戻しを請求される

ファクタリングした売掛金が回収不能になったり、割り引いた手形が不渡りになったりした場合の違いも顕著です。

ファクタリングの契約には、原則的に償還請求権がないため、ファクタリングした売掛金が回収不能になっても、買い戻しを請求されることもありません

一方、手形割引には償還請求権があります

割り引いた手形が不渡りになれば、割り引いた自社が買い戻しを請求されるのです。

ファクタリングは回収不能リスクを回避できるメリットがありますが、手形割引にはそのメリットがありません。

詐欺被害のリスクが違う

ファクタリング手形割引
詐欺被害のリスク高い低い

詐欺被害のリスクは、ファクタリングの方が高めです。

現在、ファクタリング業界にはまだまだ悪質業者が存在しています

この「悪質業者」について、金融庁などは「ファクタリングを装ったヤミ金業者」とみなしています。

万が一利用すれば違法金利での借金を負うこととなり、経営に支障をきたすでしょう。

手形割引の依頼先は、手形割引業者か銀行です。

銀行はコンプライアンスに厳しいため、安心して利用できます。

手形割引業者はノンバンクですが、金融庁から貸金業登録を受けている合法的な業者ですから、こちらも詐欺被害のリスクはほぼありません

*もしも悪質なファクタリング業者を利用してしまった場合は、弁護士に相談することでスムーズに問題を解決できます。

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審査対象が違う

ファクタリング手形割引
審査対象売掛先依頼人(振出人)

ファクタリングと手形割引では、審査内容も違います。

ファクタリングの審査は、主に売掛先に対して行われます。

ファクタリング会社としては、売掛先に支払い能力があり、買い取った売掛金を支払期日に回収できれば問題ありません

しかし、手形割引は割引の依頼人も厳しく審査する必要があります。

なぜならば、上記の通り手形割引には償還請求権があるからです。

割引の依頼人に支払い能力がなければ、手形が不渡りになったとき、買い戻しに応じることができません

そのリスクを避けるために、手形の振出人・受取人の双方を厳しく審査します。

ファクタリングと手形割引の共通点

もっとも、ファクタリングと手形割引には共通点もあります。

債権の現金化が可能

ここまでの内容からもわかる通り、ファクタリングと手形割引の共通点は売掛債権を現金化できることです。

売掛金を利用した資金調達方法には、ファクタリングのほかに売掛債権担保融資があります。
しかし売掛債権担保融資は、あくまでも売掛金を担保に融資を受けるものです。
当然ながら返済義務があり、売掛金の現金化とはいえません。

手形割引は、銀行などでは融資の一種とみなされることもありますが、融資ではなく手形の現金化です。

このことは、手形割引によって調達した資金が、貸借対照表の借入金にならないことからも明らかです。

早期資金化が可能

ファクタリングと手形割引は、現金化までのスピードに違いがあるものの、どちらも支払期日を待たずに資金化できる点で共通しています。

売掛金や手形などの売掛債権は、売掛先の支払いを一時的に自社が立て替えているものですから、売掛債権が増えると資金繰りが苦しくなります。

ファクタリングや手形割引によって支払期日前に現金化することで、資金繰りを改善できることも大きな魅力です。

ファクタリング・手形割引に向いている企業の特徴

ファクタリングと手形割引の共通点は早期に現金化できることです。

つまり資金調達に活用できるわけですが、利用条件など細部では色々な違いがあります。

ファクタリングと手形割引の使い分けは、以下のように考えましょう。

ファクタリングが向いている企業の特徴

ファクタリングの方が手形割引よりも向いているのは、以下のような企業です。

  • 手形取引をしていない
  • 経営状況が悪い
  • 回収不能リスクを回避したい

近年、手形の交換高が急速に減少しています。

手形取引をしていない企業は手形割引も利用できないため、必然的にファクタリング一択になるでしょう。

経営状況が悪い企業にもファクタリングが向いています

受取人にも厳しく審査する手形割引は利用できない可能性がある一方で、ファクタリングのほうが審査に通りやすいためです。

このほか、ファクタリングには償還請求権がないため、回収不能リスクをファクタリング会社に移転できるメリットがあります。

リスクマネジメントに役立てたい企業は、ファクタリングがおすすめです。

手形割引が向いている企業の特徴

ファクタリングよりも手形割引が向いているのは、調達コストを抑えたい企業です。

そのためには、振出人の信用力が高い手形を持っていることが欠かせません。

振出人の信用力が高く、なおかつ自社の経営内容も良好であれば、ファクタリングよりも安い手数料で手形割引を利用できます。

また、振出人の信用力が高ければ不渡りを起こす可能性も低く、自社が買い戻しを求められるリスクもほとんどありません

振出人の信用力を考慮しつつ、手形割引の活用を考えてみましょう。

まとめ:ファクタリングと手形割引の違いを徹底解説

  • ファクタリングとは、会社が所有している売掛金を売掛金の買取業者(以下、ファクタリング会社)や銀行に売却する方法のこと
  • 手形割引は、手形割引専門業者や銀行に手形を買い取ってもらうことで、支払期日を待たずに売上を回収する方法のこと

今回はファクタリングと手形割引それぞれの意味、違いや共通点についてご紹介しました。

改めてファクタリングと手形割引の違いを復習しておきましょう。

ファクタリング手形割引
取り扱う債権売掛金(強制力が弱い)手形(強制力が強い)
取引のスピード即日〜数日数日
費用1~30%1.5~15%
債務不履行の際の取り扱い償還請求権がないので買い戻しを請求されない償還請求権があるので買い戻しを請求される
詐欺被害のリスク高い低い
審査対象売掛先依頼人(振出人)
ご覧のように多少の詐欺被害のリスクはあるものの、債務不履行の際に生じるリスクマネジメントや利便性を重要視している企業であれば、ファクタリングを利用したほうがいいでしょう。

また、万が一悪徳なファクタリング会社を利用してしまった時は弁護士に相談することでスムーズに問題を解決することができます

弁護士依頼にはもちろん費用は掛かりますが、業者に返済を続けるよりもずっと安い金額で済みます

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