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養育費請求するときはDNA鑑定は必須?【弁護士が分かりやすく解説】

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  • 本記事の監修弁護士
弁護士 田島 聡泰 シン・イストワール法律事務所

監修者

弁護士 田島 聡泰

シン・イストワール法律事務所代表弁護士。東京弁護士会所属。
注力分野:債務整理(自己破産・過払い金・闇金・ファクタリング)・養育費回収など

養育費請求するときはDNA鑑定は必須?
離婚した元夫が「養育費を請求したいならDNA鑑定で実の子供であることを証明してからにしろ!」と言ってくる。DNA鑑定って義務なの?
離婚後に養育費請求をしたら拒否された。DNA鑑定をして実子だと証明すれば、回収できるのかな?

今回はこういった疑問を解決していきます。

養育費とは、離婚した夫婦間において、別居した親(非監護親)が子供と暮らす親(監護親)に支払う子供の生活費や学費のことです。

離婚後、元夫がDNA鑑定を条件に支払いを拒否してきた場合、どのようにして養育費を回収すればいいのでしょうか?
そもそも養育費請求するときDNA鑑定は義務なのでしょうか?

今回は相手がDNA鑑定を条件に支払いを拒否してきた場合の養育費の回収方法を詳しく解説していきます。

不払いや未払いなど、養育費回収で悩んでいる方は必見です!

今回のテーマ

  • 養育費の回収にDNA鑑定は必要?
  • 実際に元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した事例
  • 元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法
  • 養育費で困ったら弁護士に相談しよう
  • まとめ:養育費請求するときはDNA鑑定は必須?【弁護士が分かりやすく解説】

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養育費の回収でDNA鑑定は義務?

そもそも養育費の回収にDNA鑑定は義務なのでしょうか?

結論から申し上げると、養育費の回収にDNA鑑定は義務ではありません

実の子供であるかは養育費と関係ない

実は養育費の支払いにおいて「血が繋がっていること」はそれほど重要な意味を持ちません

というのも民法772条1項では、妻が婚姻期間中に懐胎した子供なら血が繋がっていなくても夫の子供と見なされ扶養義務が発生するとされているからです。

民法772条(嫡出の推定)
第1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する

第2項 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

民法 | e-Gov法令検索より

条文によれば婚姻してから200日後〜離婚してから300日以内に生まれた子供は血縁関係に関わらず夫の子供と見なされ、扶養義務が生じます。

そして養育費は、扶養義務に基づいて支払いの義務が発生します。

つまりDNA鑑定を行ってどんな結果が出たとしても、扶養義務がある限り養育費の支払いには関係がないのです。

必ずしも「生物学的な親子関係=法律的な親子関係」ではないと覚えておきましょう。

DNA鑑定の結果に関わらず扶養義務を解消するのは難しい

もしDNA鑑定で実の子供ではないことが発覚して、親子関係を解消して扶養義務を無くしたい場合は、以下の提起をする必要があります。

  • 子供が生まれてから1年以内の場合…嫡出否認の訴えを提起する
  • 子供が生まれてから1年以上たっている場合…親子関係不存在確認の訴えを提起する

実際の養育費請求では「子供が生まれてから1年以上たって、DNA鑑定をしたら実子ではないと発覚した」というケースが多く、嫡出否認の訴えができないことが多いのが現状です。

また、嫡出否認をするためには当事者間の合意だけでなく、事前に調停を申し立てなければならない「前置調停」が定められており、手間がかかります。

一方で、親子関係不存在確認の訴えは、期間の制限なく提起が可能です。

ただし、嫡出否認や親子関係不存在確認の訴えは必ずしも認められるとは限りません。
過去の判例ではDNA鑑定で実の親子ではないことが発覚したにもかかわらず提起が認められなかった事例もあります。

DNA鑑定で血縁関係が否定された場合に法律上の父子関係を取り消せるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は17日、父子関係を取り消すことはできないとする判決を言い渡した。

妻が結婚中に妊娠した子は夫の子とする民法の「嫡出推定」規定は、DNA鑑定の結果より優先されるとの初判断を示した。

最高裁判決はいずれも親子関係の取り消しを認めず、訴えを起こした原告側の敗訴が確定した。法律上の親子間では相互の扶養義務や相続の権利などが認められる。

同小法廷は判決理由で、嫡出推定について「子の身分の法的安定性を保持するのに合理的」と指摘。

引用:日本経済新聞「血縁なくても「父子」認定 最高裁 DNAで嫡出推定覆らず」ー2014年7月

最高裁判所の判決によると、DNA鑑定による生物学上の親子関係よりも「嫡出推定」による法律上の親子関係が優先されるとのことです。

つまり、DNA鑑定の結果は養育費の支払い義務とほとんど関係がないと言えます。

実際に元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した事例

続いては、実際に元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した事例をいくつかご紹介します。

相談事例① 養育費の条件としてDNA鑑定を要求された

相談内容

養育費の相談です。

自営業者の元配偶者と養育費の取り決めをしてから離婚しました。

離婚前は5万の養育費を払うって口約束でした。

離婚後俺の子供じゃないかもしれないからDNA鑑定をしないと養育費は支払わないと言われました。

子供は間違いなく旦那の子供です。

DNA鑑定は近々する予定なんですが、DNA鑑定で自身の子供と確信しても養育費の件に関してもメールの返信もおろそか今後養育費を払うつもりが無いような状況です、そういった場合は諦めるしかないんでしょうか?

相談事例② DNA鑑定をしたのに養育費の請求を無視される

相談内容

妊娠7ヶ月の時に元夫の親に強制的に離婚させられました。

その後「養育費が欲しいならDNA鑑定をしろ」と要求され、DNA鑑定を行い血縁関係を証明したのに養育費の支払いがありません。

子供の認知もしてくれず元夫は新しい彼女と楽しく暮らしています。

私は養育費も慰謝料も諦めるしかないのでしょうか?

参考再婚したら養育費ってどうなる?【養子縁組がポイント】

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相談事例③ 支払う意志のない相手からDNA鑑定を要求されている

相談内容

認知・養育費請求についての相談です。

婚約者との間に子供を授かり、現在妊娠3ヶ月です。

入籍予定があったのですが、色々あって婚約破棄となりました。

相手の不誠実な態度もあり、シングルマザーとして産み育てる決心をしています。

子供のために養育費は確実に請求したいと思うのですが、胎児認知には同意してくれず、「養育費はもちろん払うけど裁判でDNA鑑定してから」と言われました。

調べてみるとDNA鑑定もそれなりに費用がかかるので避けたいのですが、応じる義務はあるのでしょうか?

また裁判にかかる時間や労力と、お互いに数ヶ月後に関わらなければならない精神的苦痛も大きいのではないかと伝えましたが、任意認知は拒否されており、支払う意思がなくてただ先延ばしにされている感があります。

出産後は精神的にも体力・時間的にも自分には余裕が無いと思うので、今後どのように対応していくのが良いか相談させていただきたいです。

ご覧のように「養育費を支払う条件としてDNA鑑定を要求する元夫」はたくさんいる事が分かりますが、これは法的には間違いで、泣き寝入りは不要です。

民法の「嫡出推定」よって、血縁関係があろうとなかろうと妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と見なされるからです。

現在「養育費が拒否されている」「DNA鑑定を条件に養育費を拒否されている」というお悩みをお持ちの方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士が代理で交渉することで、精神的ストレスを少なく、時間も手間もかけずに養育費回収を解決できます。

参考養育費の不払いを解消したいときの対処法を詳しく解説

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元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法

さてここからは元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法をいくつかご紹介していきます。

元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法①
未婚の男女間で協議をする

欧米諸国と異なり、日本では裁判を起こさない「協議離婚」が認められています。

協議離婚は、費用と時間、手間を比較的少なく終わらせられるというメリットがあるのです。

まずは元夫婦間で協議を開いて、養育費の金額や頻度、期限について取り決めを行いましょう。

比較的に円満に離婚した場合、養育費を支払う方に経済的な余裕がある場合は、協議を開いて当事者同士で話し合うのが最も穏便な方法です。

もしも話したくない、顔も見たくない場合は弁護士に依頼することで協議を代行できます。

相手によっては協議の段階でDNA鑑定を要求してくる場合もありますが、これに応じる義務はありませんのでご安心ください。

元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法②
家庭裁判所の養育費調停をしよう

養育費調停とは養育費の支払いについて細かく決定する手続きの1つです。

一般的に養育費に関する取り決め(支払い期間、頻度、支払い額など)は当事者間での協議によって決められるのですが、お互い意見が合意しないことがあります。

そんなときは養育費調停を実施して中立な立場である第三者の立会のもと客観的な判断を仰ぐ必要があります。

この"中立な立場の第三者"こそが、家庭裁判所の調停委員なのです。

家庭裁判所の調停委員は、双方の家庭環境や生活環境、資産や収入などの経済状況を把握し、客観的な視点で適正な解決策や助言を提案します。

調停でまとまった内容は調停成立時に書記官によって調停調書にまとめられます。

基本的に調停調書の内容は家庭裁判所の判決と同等の効力を持つため、決定事項を破ることはできません。万が一義務を守らなかった場合は強制執行によって養育費が差し押さえられます。

養育費調停の流れやポイント【有利に進める5つのコツを徹底解説】

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元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法③
家庭裁判所の審判を行う

養育費調停でまとまった内容を男性が無視した場合、養育費請求審判を申し立てることが可能です。

養育費請求審判とは家庭裁判所の裁判官に判決を下してもらう手続きのことを言います。

養育費調停の調停委員が裁判官になったと考えると分かりやすいです

審判の場合は裁判官が最終的に養育費の額などを決め、法的な強い効力を持った審判書が発行されることになります。

裁判所の判断を仰ぐ際にもDNA鑑定が義務になることはまずありませんのでご安心ください。

もし相手方が養育費支払いの義務を守らなかった場合、強制執行によって養育費が差し押さえられます。

元夫がDNA鑑定を条件に養育費の支払いを拒否した時の対処法④
強制執行の実施

強制執行とは、いわゆる差し押さえのことです。

強制執行とは養育費を支払わない男性に対して強制的に支払わせる方法で、具体的には財産や資産、給料や貯金を差し押さえます。

養育費回収における「最後の手段」といって良いでしょう。

相手方が養育費調停、審判を守らなかった場合など、支払いの義務があるにもかかわらず拒否したケースにとる方法です。

養育費の強制執行について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【養育費の強制執行】必要な条件や手続きの流れ【弁護士が徹底解説】

続きを見る

養育費で困ったら弁護士に相談しよう

ここまで、養育費回収の対処方法を4つご紹介しました。

どの方法も時間と手間がかかる、適切な交渉が難しい、離婚するほどの相手と連絡を取り続けるという精神的ストレスが伴います。

普段の育児や家事、仕事と並行して手続きを進めることは簡単ではありません

そこでオススメなのが弁護士に相談するという方法です。

もしもあなたが夫婦間の話し合いだけで養育費の金額を決めた場合、その金額は正当な金額より低いかもしれません。

弁護士なら、あなたと元配偶者の状況から正当な養育費を算出し、その金額を回収できるように手続きを代行してくれます。

養育費回収を弁護士に依頼する具体的なメリットを見てみましょう。

  • 債務名義に必要な書類手続きを代行してくれる
  • 強制執行に必要な書類手続きをすべて代行してくれる
  • 裁判所や第三者機関とのやり取りも代行してくれる
  • 養育費回収までスピーディー
  • 減額請求を拒否できる可能性が上がる
  • 増額請求が認められる可能性が上がる
  • 無料相談の事務所が増えてきている
  • 分割後払いできる事務所が増えてきている
  • 着手金が無料の事務所が増えてきている
  • 完全報酬型の事務所も増えてきている

ご覧のように弁護士に相談するメリットは数え上げれば切りがありません

なにより面倒な書類作成や裁判所とのやり取りをすべて代行してくれるのは非常にありがたいですよね。

「養育費の減額請求を拒否したい」
「未払いの養育費をきっちり回収したい」

といった方は、弁護士に相談して確実に回収することをおすすめします。

また最近では無料相談を受け付けている事務所も数多くありますので、そうした無料サービスで見積もりをするのもオススメです。

まとめ:養育費請求するときはDNA鑑定は必須?【弁護士が分かりやすく解説】

まとめ:養育費請求するときはDNA鑑定は必須?【弁護士が分かりやすく解説】

  • 日本の民法では血縁関係があろうとなかろうと妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と見なされる
  • そのためDNA鑑定で血縁関係が証明できなくても扶養義務がある限り養育費の支払い義務を拒否することはできない
  • 世の中には養育費を支払う条件としてDNA鑑定を要求する元夫がたくさんいる
  • 養育費の未払い回収で困ったときは裁判所や弁護士の力を借りて「調停」「審判」「強制執行」といった手続きを取るのがおすすめ
  • 養育費トラブルで困ったら弁護士に相談して手続きを代行してもらうのがおすすめ

今回は相手がDNA鑑定を条件に支払いを拒否してきた場合の養育費の回収方法について詳しく解説しました。

日本の民法では血縁関係があろうとなかろうと妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と見なされ扶養義務が生じます。そのためDNA鑑定で血縁関係が証明できなくても扶養義務がある限り養育費の支払い義務を拒否することはできません。

もちろん「子供が生まれてから1年以内に嫡出否認の訴えを提起する(子供が生まれてから1年以内)」あるいは「親子関係不存在確認の訴えを提起する(無期限)」といった方法もありますが、勝率はかなり低いのが現状です。

シングルマザーの皆さんは、DNA鑑定をすることなく堂々と養育費請求をすることが可能です。

とはいえ相手によっては頑なに支払いを拒否する方も少なくありません。

そうした場合、法律の専門家である弁護士なら回収までの全てのやりとりを代行できます。

最近の弁護士事務所では相談料や着手金を無料としているところもあります。

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